小児がんとは

小児がんは、小児がかかるさまざまながんの総称です。一般的には15歳未満にみられるがんのことであり、日本では年間発生数が2,000人から2,500人(18歳までだと3,000人くらい)、発生率にして15歳未満人口1万人あたり1~1.5人という「希少疾患」です。年間6,000人が入院治療を受けています。

● ● ●

1.小児がんは、小児がかかるさまざまながんの総称。一般的には15歳未満にみられるがんのこと

2.小児がんは子供の病死原因の1位で、白血病、脳腫瘍、リンパ腫、神経芽腫、胚細胞腫瘍・性腺腫瘍など。血液のがんである白血病やリンパ腫を除き、大人では希ながんである

3.小児がんは、日本では15歳未満での年間発生数が2,000人から2,500人、発生率にして15歳未満人口1万人あたり1~1.5人という「希少疾患」である。年間6,000人が入院治療を受けている

4.小児がんは、がんの増殖も速いが、成人のがんに比べて化学療法や放射線療法の効果が極めて高いのも特徴。ここ数10年の医療の進歩で、現在では約7割~8割が治る

5.治ったとされる小児がん患者を長期に観察すると、治療による合併症などで苦しんでいるサバイバーが多いことが海外で報告されつつあり、日本でも長期フォローアップの体制構築が求められている

6.臨床試験や治験で晩期合併症の少ない新規の効果的治療法を開発するには、患者を登録するレジストリやオールジャパンでの臨床試験を推進することが必須

7.小児がんは、そもそも希少がんで開発が困難であるところ、遺伝子検査の導入により、さらに遺伝子別の希少なサブタイプでの開発が求められるようになってきている

診療実績(初発)

 2020年2019年2018年平均
造血器腫瘍1,3301,3101,3561,332
急性リンパ性白血病611578584591
急性骨髄性白血病173199194189
まれな白血病21161818
慢性骨髄性白血病27202524
MDS/MPDのうちCMLを除く45567157
非ホジキンリンパ腫149135156147
ホジキンリンパ腫31412733
その他のリンパ増殖性疾患17121515
組織球症(HLH)43565250
組織球症(LCH)104118115112
その他の組織球症22272424
その他の造血器腫瘍1331310
Down症TAM登録74496262
固形腫瘍1,8401,8481,6711,786
神経芽腫203182165183
網膜芽細胞腫831149196
腎腫瘍74594559
肝腫瘍62685863
骨腫瘍129161150147
軟部腫瘍218191183197
胚細胞腫瘍(脳・脊髄病変以外)185196188190
脳脊髄腫瘍746747680724
その他の固形腫瘍140130111127

出典:小児がん中央機関資料

2020年の初発症事例

2020/1/1〜2020/12/31症例

出典:小児がん中央機関資料

小児がんは子供の病死原因の1位

1.小児・AYA世代のがんとは15歳未満および思春期・若年成人におけるがん

2.小児がんは医療の進歩により、その70~80%は治癒が望めるようになってきた

3.しかし、小児とAYA世代において、小児がんは、「不慮の事故」とならび、病死の主たる死因であり、今も毎年500人以上の子どもが亡くなっている

4.患者数が少ないうえにそれぞれのがんは多くが100人未満と希少性の高いがんが多く、有効な治療薬が開発されにくい

 1位2位3位4位5位
1〜4歳先天奇形、
変異および
染色体異常
不慮の事故悪性新生物心疾患肺炎
5〜9歳悪性新生物不慮の事故先天奇形、
変異および
染色体異常
心疾患その他の
新生物
10〜14歳自殺悪性新生物不慮の事故先天奇形、
変異および
染色体異常
心疾患

海外に比べ、小児がんに用いられる治療薬は圧倒的に少ない

日本における小児がん医薬品開発の現状

● ● ●

日本 vs. 米国: 承認されている小児がんの薬剤数
(2010-2018年)

  • イホマイド (リンパ腫)
  • イリノテカン
  • ハイカムチン(小児悪性固形腫瘍)
  • リツキサン(免疫抑制下のB-LPD)
  • テモダール (ユーイング肉腫)
  • エトポシド
  • フルダラビン
  • シタラビン
  • シクロホスファミド (CAR-T前のリンパ球除去化学療法)や、古い薬の用法追加(ロイナーゼ:筋注、キロサイド:髄注)
 
  • Everoliums
  • Aspraginnase Erwinia Chrysanthemi
  • Glucarpidese
  • Dinutuximab
  • Pembrolizumab
  • Avelumab
  • Pembrolizumab
  • Blinatumomab
  • Tisagenlecleucel
  • Gemtuzumab Ozogamicin
  • Emicizumabkxwh
  • Nilotinib
  • Blinatumomab
  • Methoxy Polyethylene
  • Glycol-Epoetin Beta
  • Pembrolizumab
  • Ipilimumab Lobenguane I131
  • Emicizumankxwh
  • Empalumab Larotrectinib
  • Romiplostim
  • Pembrolizumab
  • Calaspargase Pegol-Mknl
  • Tagarzofusp-erzs

出典: 野口敦 「小児がんの薬剤開発に関する最近状況」 2020年1月8日 小児がんのための薬剤開発を考えるより作成

なぜ小児がんの薬剤開発が進まないのか?

現在、医薬品の小児患者のために適切に評価され小児患者に対する適応を持つ医薬品は限られている。小児への使用が想定される医薬品については、小児集団における使用経験の情報の集積を図ることが急務であり、成人適応の開発と並行して小児適応の開発を行うことが重要である。また、成人適応の承認申請中又は既承認の品目について、引き続き小児の用量設定等のための適切な臨床試験 (治験、市販後臨床試験)の実施が望まれる

 2000年12月 医薬審第1334号通知 「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス」(1.2 背景より抜粋)

しかし、現状は・・

1.市場規模が小さく、開発コストや法的義務(安定的供給・安全性監視活動など)の負担が大きい

2.第Ⅰ相臨床試験施設・小児治験に精通した施設、医師、CRC(臨床試験コーディネーター)の不足など小児治験を実施する環境が不十分

3.医師主導治験で開発しようとしても、公的予算・研究費の確保が困難

4.対象患者が少なく被験者の確保も難しいため、臨床試験の実施が困難

日本だけの問題でなく世界共通の課題
インセンティブなしでは、製薬企業にとっては採算性が低く、
開発の困難性が高い


教育保障の現状と課題

● ● ●

病気の子どもの教育をめぐる現状と課題

――教育が、治療や療養生活の変化に対応していない――

治療の変化・入院期間の短期化に伴う療養生活の多様化

短期入院や入退院を繰り返す子どもの教育の場を確保しにくい

病院内の学校で教育を受けるためには転校しなくてはならない

通常の学校における病気の子どもへの理解と教育支援が行き届いていない

新型コロナの影響による対面授業の制限

スクールギガ構想の推進により、遠隔授業の導入は進んだが通信環境は未だに不十分

ICTの活用による新たな教育ツールの導入

民間団体や大学を拠点とした学習サポーターの拡がり

高校生の教育保障について関心が向けられてきた

私たちが求める「病気の子どもへの切れ目のない教育保障」