座長からのメッセージ

座長 斉藤 淑子

小児がん治療は、1年以上の長期入院を必要とする場合もありますが、最近では入院期間の短期化も進み、治療の合間に一時的に退院して自宅や宿泊施設で療養したり、通院主体の治療となるなど治療スタイルは多様化してきています。

しかし病気の子どもたちへの教育のあり方は、この多様性に対応するものとなっていません。 どんなに厳しい治療や状態であっても、小児がんの子どもたちは教育を求めています。教育はまさに子どもたちの生きる力を支えるからです。

したがって、教育は、子どもたちのいる場で、それぞれの心身の状態に応じた内容や形態で継続的に行われることが権利として保障されるべきです。

私たち小児がん対策国民会議は、医療、教育および患者団体の代表をメンバーとして教育ワーキングを立ち上げ、小児がんの子どもたちへの切れ目のない教育を実現していくのために、①籍の有無にかかわらず学習を継続できる制度の推進、②病院にある学校の教育条件の改善、③通学していた学校と病院にある学校との連携の強化、④ICTの積極的活用、⑤小児がんの子どもへの理解推進をめざして、国、地方自治体、教育関係者をはじめ病気の子どもたちに関わる全ての人たちに働きかけていきたいと思います。

ご支援、ご協力の程よろしくお願いします。

都留文科大学 地域交流センター 研究員
全国病弱教育研究会 会長

日本における小児がん患児の教育の現状

入院中の小児がん患児への教育保障は、1990 年代後半から大病院を中心に病院内教育が展開されてきましたが、全国的には未だに数も少なく、各教科の専門教員による授業が提供されにくい等、十分な学習保障が行える体制にはありません。また病院内教育を受けるためには転校手続きを必要とするため、短期入院や入退院を繰り返す子どもたちの実態には合わなくなってきています。

一方、それまで通学していた地域の学校からの教育支援も行き届いていません。文科省が  2015  年に実施した「長期入院児童生徒に対する教育支援に関する実態調査」によると、長期入院した児童生徒への地元校の教員による学習指導は週 1 日以下、1 日 75 分未満が過半数を占めていることが明らかになりました。こうした中で小児がんの子どもたちは学習面だけでなく、友達との交流や社会的経験も制限され、心理社会面においても  様々な課題を抱えざるを得ません。退院後に不登校になる児童生徒もまれではありません。

本会議ではこのような現状を少しでも改善し、小・中学生および高校生にたいして切れ目のない教育を保障す ることを目的に、入院、自宅療養中、退院後も継続して学べるよう、また入院前の環境と可能な限りつながっていられるように人的支援の充実、ICT 活用の推進、学籍制度の見直し(あるいは学籍制度の弾力的な運用)を行政に働きかけていきます。その一歩として先駆的に取り組んでいる実践と研究を検討し、全国に実践モデルを 提言していきます。

切れ目のない教育支援ワーキンググループ メンバー

座 長斉藤 淑子都留文科大学 地域交流センター研究員 / 全国病弱教育研究会 会長
近藤 博子公益財団法人がんの子どもを守る会 副理事長
前田 美穂日本医科大学 名誉教授
井上 富美子認定特定非営利活動法人ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ 理事長
石田 也寸志愛媛県立中央病院 小児医療センター長、患者支援室長
武田 鉄郎和歌山大学教育学部 教授
早川 晶淀川キリスト教病院緩和医療内科 部長
真部 淳北海道大学大学院医学研究院小児科学教室 教授